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木本美紅さん|ココが分かれ目! 広報のスペシャリストが教える〝デキる広報〟になれる人・なれない人<後編>

広報とPRのスペシャリスト・木本美紅さんに伺ったお話の後編は、今すぐ実践できる広報術についてです。広報の仕事で大切なことや心構えについてご紹介した前編と併せてご覧ください。


広報担当者としてのスタンスと心構えとは

企業広報時代に実践していた〝広報術〟を教えてください。

企業広報の時は、ほとんどオフィスにいませんでした。記者さんのところに出向いて、直接お話ししました。やはり人と合わないと何も情報が得られないからです。

広報の勉強会にも、とにかくたくさん顔を出しました。他の企業の広報は何をしているのか、何が強みなのか、観察したり調べたり。記者さんは1社のことを知りたいわけではなくて数社のことを知りたいのです。競合他社のことから業界動向、トレンド、市場はどうなっているのか。記者さんは、そこまでわかって初めて記事を書けることも多いのです。

ですから、自社ではなく業界の売り込みをするほうがよほど効果的。極端にいえば、自社の話はしないくらいのことが必要です。「業界のことを教えてください」と記者さんに聞かれるようになったら、広報として一人前です。

広報担当者に大切なのは、どのようなことでしょうか?

「フットワークの軽さ」と「チャンスを自らつかみに行くこと」です。

たとえば、有名な媒体の編集長さんはとてもお忙しくて、なかなかつかまりません。それがいつだったか、たまたま「今から10分だったら空いている」と言われたのです。「今から行きます!」と即答して飛んでいきました。おかげでお目にかかることができ、今もよくしていただいています。

ですから、フットワークの軽さはとても大事。広報担当者の皆さんがそうであってほしいと思います。

私は、新規で記者さんのアポイントが取れると支援先の広報担当を連れて行くのですが、その時に来る人、来ない人、とに分かれます。ここが分かれ目。やはり、来る人は伸びるのです。

プライベートを優先する人、社内の打合せを優先する人、それぞれですが、新規の記者さんに会える機会はなかなかありません。広報としてはビッグチャンスです。それをつかみに行かないなんて、私には信じられなくて。チャンスは最大限に活かしてほしいと思います。

もう一つのビッグチャンスが、ゴールデンウイークやお盆の期間。一般企業は休みますがマスコミは動いています。それこそ〝アポイント取れ放題〟です。そこでも、来る広報、来ない広報に分かれます。ふだん会えない記者さんに会えるので、私としては来てほしいのですが。

人が休んでいる時には休まないのが広報の仕事。みんなと一緒になって休んでいたら、せっかくのチャンスを逃してしまいます。私はもちろんフル稼働しています。ネタがない時期なので、そんな時、記者さんに「木本に聞けば、何かネタが出てくるのでは」と思い出してもらい、問い合わせが来ることが大事です。

そしてもう一つ、他の人と同じ記者さんに当たるのは時間のムダ。ネタが一人に集中してしまうので、よほどの大ネタでない限りボツになる可能性が大きいですから。署名記事などを自分で調べ、皆さんが知らない記者さんにアプローチすることが大切です。

広報のスキルアップに欠かせない「素直さ」と「根回し」

最後に〝新米企業広報〟の方にアドバイスをお願いします。

広報として誰かと話をしていてわからないことが出てきたら、その場で「わからないので教えてください」と聞きましょう。特に若いうちはそれでいいのです。

記者さんにも「新人なので教えてください」と。記者さんを味方にしてしまうと、のちのちお得です。私の場合はそうでした(笑)  関係性ができれば、きっと味方になってくれます。

また、社内広報もとても大切です。社長とコミュニケーションをとるのは絶対に必要ですし、情報をすくい上げるため、企業広報時代、私は事業部の責任者とも週1回必ず打合せをしていました。

そして、報告を欠かさないこと。外にばかり出ていると、社内から「何やってるんだ」と言われてしまいます。何のために行っているのかも含め、きちんと報告しましょう。

社内の人間を巻きこむことも大切。たとえば、社内報を作ったりもしましたし、ある有名なビジネスサイトの編集長と自社の社長を会わせるセッティングをしたりもしました。そうすると社長は、私が何をしているのか理解します。社長が理解してくれれば、社内広報はほぼ成功です(笑)

社内向けに広報の勉強会を開いている人もいます。広報はどんな仕事か、理解してもらったうえで、外に出ていけば「何をやってる」とは言われなくなります。特にベンチャーはフットワークの軽さが大事。社内にいても何もできないことをしっかり認識してください。