榎本佳代さん|生え抜きの事業部長が実行した、キャリア形成の中断を最小限にする準備
デジタルマーケティングのリーディングカンパニーとして業界をリードしてきた株式会社オプトで営業部長を務める榎本佳代さん。副事業部長から事業部長に昇進したタイミングで妊娠が発覚し、出産後、新しい部署の立ち上げのため育休2ヶ月でスピード復帰しました。「出産・育休・復職を経て、今後のライフプランがかなり明確に見えてきた」という榎本さんに、妊娠・出産に対する心構えと準備について伺いました。
榎本佳代
株式会社オプト
妊活スタート前から早期復職を決意
私は働くことがすごく好きで、入社してからというもの、いつも全力200%。そのおかげでいろいろなチャンスをいただいてきました。もちろんすべての仕事を喜んで受け、たとえ自信がなくてもとりあえずチャレンジするのが基本スタンスでした。
27才で結婚し、そろそろ妊活を・・・と思い始めたのが28歳。これから仕事に脂が乗って、まさに働き盛り。それなりに責任のあるポジションにも就き、ますます充実して働ける、という時でした。そのような大事な時期に出産・育児で1年間休むことに対して、ジレンマがなかったといえば嘘になります。
1年間休んだからといって仕事が逃げるわけでもなく、優秀な人は1年間休んだとしても、その後にいくらでもチャンスがあります。中途採用と同じですね。
ですが私としては、キャリアを積み重ねている段階で歩みを止めたくない、という気持ちがありました。ちょうどその頃、現場のチームマネージャー的な立場から、副事業部長という新設されたポジションに昇格し、今後のキャリアプランについて考え始めた時期でもありました。
あれこれ悩んでいると、出産・育児の先輩方が、女性経営者や、子育てをしながら第一線で働かれている方を紹介してくださったのです。その方々にお話を伺うと、産んだ翌日から会社に出ていたとか、そこまででなくても1ヶ月で復職とか。欧米でも、産休と育休合わせて3ヶ月くらいがスタンダードだそうで。
私が知らなかっただけで、1年どころか半年も休まないことが当たり前の世界もある。私はそちらの道を行きたいと思いました。日本のスタンダードとは異なりますし、社内でもこれまでにないケース。迷惑な存在として悪い前例にならないよう、妊活をスタートする前から入念に計画を立てることが必要だと気がついたのです。
妊活スタート前からあらゆるリスクを想定してシミュレート
まず考えたのが、子供を授かることができたら、いつまで働くのか、いつ復帰するのか。産むまでの働き方はどうありたいのか、そして、何が自分にとっての幸せなのか。
私の出産は自分だけの問題ではなく、会社にも同僚にも、家族にも、もちろんお腹の中の子どもにも影響のあること。みんなに理解してもらい、みんなが応援してくれる環境を整えることが大切です。自分の気持ちや考えを整理し、妊娠中から出産後の生活をしっかりシミュレーションすることは、みんなに説明して理解してもらうためにはもちろん、私自身にとっても、とても有意義でポジティブなプロセスでした。
ご心配いただいたり、逆にお叱りをいただいたり。そのお叱りは自分一人では思いつかないリスクだったので、とてもありがたかったです。おかげでそのリスクに対するシミュレーションもできました。
さまざまな人に自分の気持ちを聞いてもらい、話をしていくうちに、来たるべきリスクとか、おそらくこういうことが起こるから、その時はこういうふうに対処しようとか、すべて事前にシミュレーションが完了。おかげで妊娠中から産後まで予期せぬハプニングは一切なく、順調に進行することができました。
冷静な時に自分を俯瞰的に見る
育休で休んでいる間、私がいなくても仕事が回っていると「私、必要じゃないのかな」と、不安でたまらなくなったことがあります。人間は感情の生き物ですから、その時々の気持ちに引っ張られがちですよね。
体調もまだ完全に戻っていないのに、初めての育児で連日睡眠不足。そんな状況で健全な思考や正しい判断ができるわけがありません。そういうマイナスの感情に陥ることもあると想定し、出産前に、自分にとって何が大切なんだろう、とじっくり考える時間を作りました。
また、夫とたくさんケーススタディをしたり、それについて話し合ったり。先輩女性にいろいろなモデルケースのお話を聞いたことも、本当によかったと思っています。
仕事と同じように、どんなことでも事前準備が一番大切。妊娠・出産の場合は、1ヶ月先とか3ヶ月先とかでなく、できれば1年から1年半後ぐらいのことを意識するようにしていました。出産してから復職後、あるいは復職して半年後くらいまで、タイムスケジュールを立てる感じで。
将来の夢は漠然としていても、一年半から二年くらい先の“自分をイメージする”時間を確保することは大事な気がします。それができれば、かなりのことがもっと楽に乗り越えられるようになるのではないでしょうか。