山中泰子さん|妊活中や育休明けのジレンマを抱えきれずに、退職していく女性たち。人事だからこそ気づいた、社会のゆがみに立ち向かう。
人事歴15年。現場の声を知り尽くしたからこそ、気づいた社会のゆがみ。
まったく新しい目線で、女性が働きやすい時代をつくる、QOOLキャリア代表取締役の山中さんに話を聞きました。
ご経歴
三重県出身/東京在住
’07年 大手人材系企業で人事担当
’13年 ゲーム系ベンチャー企業で人事責任者を担当(産休育休取得1年)
’16年 広告代理店ベンチャー企業で人事責任者を担当
’19年 サブスクスタートアップ企業で人事立ち上げを担当、その他3社業務請負(採用労務、制度壁打ち、制度設計支援)
’22年 QOOLキャリア代表取締役就任
人事歴15年。QOOLキャリアの代表として、働く女性の転職支援や、企業の福利厚生サポートなどを行う。
プライベートでは、小学3年生のママ。
多くの企業での人事責任者を経験して気づいた、社会のゆがみ
人事歴15年。多くの企業で、採用や人事制度設計を担当。
私は実はもともと、フィットネスインストラクター。人事とは、まったく無縁の業界にいました。
ところが結婚を機に、夫の休みが合わなくなってしまい、土日休みの仕事を探すべくキャリアチェンジをすることに。インストラクターとして人前で話すのが得意だったので、学生さんに向けて説明会などをする新卒採用のアシスタントに応募し、人事のキャリアをスタートさせました。
そのうちに大きな仕事を任されるようになり、新設部署で大規模な採用・育成・制度設計をするようになりました。従業員と経営の間の立場で調整するのは大変でしたが、非常に面白さを感じました。
その後、ひとり親家庭の就業支援事業を自治体とともに立ち上げ、保育施設を併設した就業施設の開設 / 運営するなど、多くの経験をさせてもらいました。さらに採用や制度設計の経験を買われ、上場会社の人事担当執行役員として転職。その後は、複数のスタートアップ企業の人事責任者として、働く人と企業の成長をサポートし、気づけば人事歴は15年になっていました。
社会のゆがみをなおすべく、退職を決意。
実は人事には、周りの人には話しにくいような相談が、たくさん寄せられてくるんです。
「異動を命じられたけれど、実は妊活中で断りたい」
「産休を申請していたけれど、流産してしまった」
「時短勤務の人と同じ給料なのは納得いかない」
など。
このような情報は外には出ませんから、世の中では無いものとされてしまっているのですが、実際このような悩みを抱えている方は多くいらっしゃいます。
そして、このような悩みが解消できず、表向きの退職理由を作って退職していく女性たちも、多くみてきました。産休・育休や福利厚生などの制度をどれだけ整えても、働いている人たちの悩みを解決しきれないというジレンマを感じていました。
世の中の働く女性が求めているものと、企業のニーズがまったくマッチしていないのです。この歪んだ構造を変えて、働く女性を取り巻く環境を変えようとしましたが、企業の人事という立場では限界がありました。そこで、働く女性の立場にとことん寄り添える仕組み作りをしようと決意したのです。
そんなときに出会ったのが、女性ライフステージのD2Cブランド「BELTA(ベルタ)」を運営する株式会社ベルタでした。ベルタは、「女性のライフステージにおける課題解決」をミッションに掲げている会社です。同じ志をもつ仲間がいるベルタでこそ、理想とする女性のキャリア支援が実現できると思い、ベルタのグループ会社「QOOLキャリア」の代表に就任しました。
すべてのライフステージを通して、生き生きと働ける社会をつくる
ワーキングマザーを取り巻く社会課題
実際に転職相談をいただく多くの女性と面談をするなかで、浮かび上がってきた課題が2つあります。
<1>子育てしながら働く女性の収入の低さ
一つ目は、子育てしながら働く多くの女性は、驚くほど年収が低いことです。QOOLキャリアに登録している女性の平均年収は、300万円台。長年一つの会社に在籍し貢献してきても、昇給のチャンスはほとんどありません。さらに産後は、時短勤務に切り替えたことで、年収が200万円台になってしまったという人も珍しくありません。これだけ物価が上がっている今、子どもを保育園に預けて働いたところで、手取りがどれだけ残るというのでしょう。職場復帰を諦めて扶養内で働くという選択をする人の背景には、このような事情があります。収入が上がらないことを見越して、妊娠と同時に会社を辞めてしまう人が、半数もいます。
<2>時短求人の少なさ
二つめは、時短求人が少ないことです。子育てしながら働く女性は、「時間内で終われる仕事」を探している、もしくはそれしかできないという人がほとんどです。それにもかかわらず、時短の求人案件は少なすぎる。世の中のニーズと女性のニーズが全くマッチしていないのです。さらに、少ない時短案件のほとんどが、ジョブ型で、専門スキルの求められる仕事です。長年一つの会社でコツコツ同じ仕事を続けてきたタイプの人には、手が出せないような求人ばかりです。このギャップが埋まらない限り、女性の収入が上がらないという悪循環が生まれてしまうのです。
固定観念を覆し、選択肢を増やしていく
一方で、二極化が起こっており、スキルがある女性には好条件の仕事も沢山集まっています。このような二極化が起きているのは、一部の女性がスキルアップの機会を疎かにしてきた結果なのでしょうか。それとも世の中の仕組みが原因なのでしょうか。それは一概には言えませんが、この現状を変えるには、世の中の固定観念を変えていくほかありません。
そのためにまず、産休がとりやすくて、職場復帰しやすい環境をフォローするサービス「TSUMUGU」(つむぐ)を立ち上げました。産休・育休の間だけ、現場をまわしてくれるプロフェッショナル人材を企業間でシェアすることで、職場復帰したときのポジションをキープすることができます。
まだまだ、変えていけるところが沢山あります。女性のキャリアについて議論される際には、「出産」にフォーカスされがちですが、人生に待ち受けているライフステージをトータルでサポートするのが大切だと思っています。一度きりの人生、選択を迫られるのではなく、自分で選択したという実感を持って進んでいける人を増やすために、今後も邁進していきます。
山中 泰子(やまなか やすこ) 株式会社QOOLキャリア 代表取締役
株式会社QOOLキャリア(https://career.qo-ol.jp/)
QOOLキャリアでは、キャリア支援事業のほか、妊娠前後の身体と心のケアや商品の割引や、育休中の社員の変わりに期間限定で活躍してくれる即戦力人材を企業間でシェアができる、ライフステージ特化型福利厚生サービス「TUMUGU(つむぐ)」を展開しています。
TUMUGU:https://career.qo-ol.jp/tumugu/
※法人向け導入費無料、利用料3ヶ月無料キャンペーン実施中
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