女性リーダーたちにみる、変化をもたらす人材の秘訣
デジタル先進国としてその名を轟かせ、世界でも一歩進んでいると言われる国「エストニア」。日々プログラミング教育や語学教育、さらには起業教育など国の未来を創る取り組みがここから始まっています。その反面、OECDの男女賃金格差ランキング(2016年)では、韓国に続き世界ワースト2位。国の創造性とジェンダーギャップが入り混じる中、エストニアで輝く女性リーダーたちを紹介していきます。「環境に依存ではなく、変化をもたらす人材」とは。
目次
一歩飛び出す、先見性を持った起業家
近年注目されている『ブロックチェーン』。そのブロックチェーンを用いた証券取引所の創造に挑む起業家がいますは。それがエストニア発のスタートアップ企業「Funderbeam」の創業者であり、CEOのKaidi Ruusalepp(カイディ・ルーサレップ)氏。
大学卒業後、MBAを取得し、中央証券所で勤務。その後ナスダック証券取引所にて重役を務める、という誰もがうらやむ華々しいキャリアを築いてきた彼女。そんな彼女がなぜ起業に踏み切ったのでしょうか。
「理由は簡単で、今やらないと、後悔する気がしたから。エストニア政府が推し進めてきた起業教育の中で育ったため、起業へのハードルは特に感じませんでした。エストニアが『先進的国家』へと進化するタイミングに遭遇した、今をチャンスと捉えて起業しました。」
エストニアという国の文化に後押しされながら、時代の先をゆくビジネスを生み出すKaidi氏。経歴はもちろん、彼女自身の巻き込み力は圧巻。funderbeamには、アメリカの大手IT企業を辞めてでも転職した人材が数多くいます。
チャンスを捉えて逃さない姿勢と、決断できる力が彼女の成功を後押ししています。
正しく理解し決断する、ヨーロッパを代表する若手起業家
国内最年少の16歳で起業。2007年には「ヨーロッパを代表する若手起業家20」の1人に選出され、北ヨーロッパで7つのテレビチャンネル立ち上げに成功した赤縁のメガネが印象的なKaroli Hindriks(カロリ・ヒンドリクス)氏。
その後はオンライン転職プラットフォーム「jobbatibal」を創業。圧倒的なスピードで人の何倍もの成功と失敗を繰り返して来た彼女はインタビューで、こう答えています。
「エストニアの市民はソビエト占領の独立後、月収にして10€(現在で1,300円程度)にも満たない生活をしていました。起業する選択肢は、企業に就職するよりもずっと魅力的。さらにエストニアの法人税は0%なので、起業には打ってつけ。起業しない理由は見つからない、というのが理由でした。」
客観的に見て当たり前な選択をする。歴史的背景からくる危機感や、しっかりとした現状の理解はより良い選択をするには必要なことかもしれません。
キャリアの築き上げる、女性大統領
エストニア独立以来初の女性大統領になったKersti Kaljulaid(ケルステイ・カリユイド)氏。
1996年〜1997年で国内大手通信会社の重役、1997年〜1998年で銀行のPMなどを歴任。2001年からは国家公務員を経験し、MBAを取得後の2004年〜2016年を欧州会計検査院のエストニア代表として務め上げた、名高い経歴の持ち主です。
しかし彼女自身も、夫との間に二人の子供を授かるも、その後離婚することに。大統領としてではなく、女性としての苦労や困難を経験してきたうちの一人。彼女の生き様が訴えるのは、転職や結婚、離婚、子育てなどライフステージで異なる女性ならではの障壁と仕事は”どちらが”というバランスで見ることはできないという教訓です。
エストニアから学ぶ、環境を言い訳にしない女性の強さ
エストニアの女性リーダーに共通するには、環境を言い訳にしない姿勢です。過去に前例がなくても自分がそのパイオニアとなるべく飛び込む勇気とモチベーション、ピンチをチャンスと捉え、なりふり構わず行動する姿勢は、環境への依存を全く感じさせません。
起業が全ての選択肢ではないし、国のリーダーになることが全てではありません。今求められているのは、男女関係なく「古い概念に縛られず、新しいステージに飛び込み、自らの力で作っていく姿勢」なのではないでしょうか。
参考文献