意外と知られていない? フレックスワークで活躍できる人材・できない人材
フレックスタイム制やテレワークなど企業に属していながらも自由な働き方が昨今注目を集めています。かつては家でできる仕事といえば内職くらいでしたがインターネットの普及によって「在宅ワーク」が可能になり、「フレックスタイム」制の導入により業界によっては定時という考え方自体がなくなってきているところもあります。ただ2012年に伊藤忠商事がフレックスタイム制を廃止するなど導入後に制度自体を廃止する企業も相次いでおり、持続的な運用が難しいという声も少なくありません。そこで今回はフレックスタイム制を導入することで得られるメリットとデメリットを労働者と企業の両方の視点で見ていきます。
目次
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、労働基準法第32条の3に基づく労働者が始業時刻と終業時刻を労働者個人で決定することができる制度のことです。
あくまで企業が労働時間において介入するのは一定期間内の総労働時間に関する取り決めのみとなっています。
通常であれば始業時間と就業時間は就業規則によって決定されているものですが、フレックスタイム制の導入によって労働者が時間的制約を受けない働き方を実現することができるようになります。
フレックスタイム制といえばヤフー株式会社やフリマアプリで有名な株式会社メルカリ(一部コアタイム有)で導入されており、個人がさらに仕事と個人生活を充実させ、さらにパフォーマンスを発揮できるような取り組みとして注目を集めているのです。
企業がフレックスタイムを導入する上で必要なこと
企業はフレックスタイム制を導入する上で、就業規則への明記と労使協定の締結を必ず行わなければいけません。
就業規則の中で始業時間と終業時間の両方を労働者自身の決定に委ねることを明記した上で、所轄の労働基準監督署への届け出をする必要があります。
また労使協定においては、対象となる労働者の範囲や清算期間、清算期間内の総労働時間、1日あたりの標準労働時間、コアタイムとフレキシブルタイムについて定めておく必要があります(ただし届け出をする必要はなし)。
上記の取り決めを怠ると労働者側だけではなく、企業側も労働時間や賃金について労使間で揉める元となるので注意が必要です。
上記の他にフレックスタイムが適している環境、働き方であるのかどうかの見極め、労働時間を把握するためのツールの設置など運用が円滑に回るような準備をしておくことが必要です。
フレックスタイム制導入のメリット
個人の生活に合わせた働く時間の設定が可能
都心部であれば通勤ラッシュの満員電車で嫌な思いをしたことがある人がほとんどですよね。家族がいレバ職場の近くに引っ越すのも一苦労です。
また子どもと先生との三者面談の際には早退しなければいけないこともしばしばです。フレックスタイムであればコアタイム以外のフレキシブルタイムを活用することで各々の個人の生活との両立をしやすくなるというメリットがあります。
優秀な人材を採用しやすくなる
ハイスペックと言われる優秀な人材はあくまでも自分の働きたいと思える環境を選ぶことができる人材である。
すなわちプライベートを削り、企業に合わせた働き方を強制されてまで企業に残る必要のない人材に一定の「選べる権利」を付与することはそうした優秀な人材を確保しておくのに効果があります。
また女性などで優秀な人材でありながらも時間的制約のために働けないという人もいます。そうした人材に対する支援という意味でも時間的制約を外すことができるフレックスタイム制はメリットがある制度なのです。
残業時間を削れる
企業にとって必要のない残業を繰り返す社員は支出の根元になります。フレックスタイム制の下では1ヶ月という清算期間の中で、週あたりの過不足分の調整を行うことができるため、ある週で残業が発生(40時間以上/週)したとしても翌週での調整が可能になります。
企業にとってもフレックスタイム制の導入はメリットのある制度なのです。
フレックスタイム制導入のデメリット
取引先との調整が大変
もともとコアタイムが短い場合、外部との打ち合わせや会議などの調整は非常に煩(わずら)わしいものとなります。
「日程の調整が面倒だからもういいや」となれば手にできるはずだった機会はみるみる減っていきます。スピードを持った業務推進を継続するためには取引先の相手への理解を図ることも必要でしょう。
仕事内容や職種によっては使い勝手が悪い
仕事の内容や職種によって制度の導入の是非は大きく分かれるところです。
1つの企画としてプロジェクト単位で進むような場合、役割の明確化と工数管理によってフレックスタイムであることのデメリットはほぼなくなる一方、全体で連結した仕事でface to faceでのコミュニケーションの必要性が多い場合は、一気に業務難易度は高くなります。
また営業などで顧客フォローと新規開拓が分かれている場合なども働く場所や時間は先方と合わせるだけで比較的自由に時間を設定することができます。
ルーズな制度になりやすい
もう一つのデメリットはルーズな制度として認知されることによる従業員のモチベーションの低下です。
フレックスタイムを一元的に導入するとしても、全ての従業員がフレックスタイムの導入によってそれまで以上のパフォーマンスを発揮できるわけではありません。ある社員はフレックスタイムによって生産的な働き方をしようとする一方、怠慢な社員が現れる可能性は大いにあるでしょう。
こうしたモチベーションの差が葛藤や不満の原因となり、退職を招いてしまう可能性もあるのです。
ではこれらのメリット・デメリットを理解した上でフレックスタイム制を導入している企業で働く人材の活躍する要素はどのようなものがあるのでしょうか。
フレックスタイムで活躍できる人材の定義
労働者側からしても時間を選べるというのはかなり有意義な制度だと考えられるでしょう。しかし継続的にパフォーマンスを出すとなると個人個人に合った働き方を見つけていく必要があります。
フレックスタイム制の下で活躍できる労働者は以下の項目に多く当てはまる人になるでしょう。
- 時間内で決められた目標の達成に向けてコミットできる人
- プロジェクトマネジメント(進行管理)を行うことができる人
- 営業などパフォーマンス評価がしやすい職種についている人
- オンラインでのコミュニケーションで成立する人
時間を選ぶ一方でパフォーマンス(成果)を上げられなければ企業としてその人材を維持する必要はなくなっていきます。
一方で時間に関わらず成果を上げられる労働者ほど頼もしく、また企業と労働者の双方にメリットのある状態だと言えます。
制度はあったほうが良いと考えられがちですが、転職の場合は成果を出す働き方を求めるであれば自分自身に合った働き方であるかどうかを見極め、職種やコアタイムなど細かい部分まで見た上での判断が必要と言えるでしょう。