育児休業給付金を受給することはできる?転職したばかりですぐに妊娠した場合に
結婚や出産などの理由で転職をする際に知っておきたい給付金のひとつ「育児休業給付金」。ワーキングママとして今後働き続けるためにも、こういった給付金は上手に活用していくほうが良いでしょう。しかし、「育児休業給付金」という言葉は聞いたことがあっても、実際にどのようなものなのかについて具体的にはわからない人もいるのではないでしょうか。たとえば、「転職したばかりで妊娠が発覚した場合、受給することができるのか」が気になるワーキングママも多いようです。そこで、この記事ではワーキングママの強い味方といえる「育児休業給付金」について詳しく紹介します。
そもそも「育児休業給付金」ってどういうもの?
「育児休業給付金」とは、産休や育休のときに雇用保険から支給される給付金のことです。産休や育休中は勤務している会社からの給料が出ない場合が多く、子育てしながら働きたい人をサポートするための制度となっています。基本的に、育休や産休期間終了後に職場復帰をする前提の人を対象としています。ワーキングママだけではなく、育休をする父親も対象です。つまり、夫と妻どちらでも育児休業給付金を受給することができるのです。正社員ではなくても、パートや派遣として働いている場合も対象となります。
ただ、育児休業給付金を受給するためには、一定の条件をクリアする必要があります。1つ目は「雇用保険に加入していること」です。こちらの給付金は雇用保険から支給されるものなので、加入している人が対象となります。そのため、可能であれば、将来的に子どもを持つ予定の夫婦は、今後のことを考えて雇用保険に加入できる会社で働くのが望ましいです。
2つ目は「育休・産休を開始する前の2年間に11日以上勤務した月が12カ月以上あること」です。つまり、育休や産休開始日の1日前から遡った2年間で、1カ月に11日以上勤務している月が12カ月以上あれば良いのです。たとえば、4月1日から育休・産休が開始する場合、前日の3月31日から遡った2年間ということになります。
転職をして1年未満の場合でも、前職で雇用保険に加入していれば、そのときに働いていた期間を加えて計算することが可能です。注意点は、前職を退職した際に失業保険の手続きをした場合は通算できないことです。もし失業手当をもらっていないとしても、受給資格があると決められた時点で通算することができなくなります。条件の3つ目は「育休中に、休業前の8割以上の給料を得ていないこと」、4つ目は「育休・産休後に職場復帰をする予定であること」です。
正社員ではなく、パートや派遣でも条件をクリアしていれば育児休業給付金が支給されます。パートや派遣の場合の条件は、3つあります。1つ目は「同じ会社で1年以上働いていること」、2つ目は「1週間の所定労働日数が2日以上あること」、3つ目は「育休期間終了後も継続契約をすること」です。2つ目の条件については、労使協定がない場合、対象外となるので注意しましょう。
育児休業給付金の支給額は人それぞれ!毎月の支給額の計算方法とは
「育児休業給付金をいくら受給できるのか」は育休・産休前に得た賃金から計算できます。育休開始から6カ月間は賃金の67%、7カ月目以降は50%を受け取ることが可能です。最初に「(月給×6カ月)÷180」で「休業開始賃金日額」を出しましょう。育休前の月給が25万円として算出すると「(25万×6)÷180=8333」となり、休業開始賃金日額は8333円であることがわかりました。次に、「賃金月額」を算出します。こちらの計算方法は「休業開始賃金日額×30日」です。当てはめると「8333円×30日=24万9990円」となり、賃金月額は24万9990円となります。
「賃金月額×67%=育休開始から6カ月の支給額」「賃金月額×50%=7カ月目以降の支給額」という算出方法で、毎月の育児休業給付金の支給額を出すことができます。今回の例であれば、「24万9990円×67%=16万7493円」「24万9990円×50%=12万4995円」となるため、育休開始から6カ月間は毎月16万7493円、7カ月目以降は毎月12万4995円が支給されるとわかります。育休期間を1年間取得できたとすると、はじめの6カ月間で100万4958円、残りの6カ月間で74万9970円となり、合計175万4928円の育児休業給付金が受給できるのです。年に4回以上賞与を受け取っている場合はそちらも育休前の収入に含めて計算しなければなりません。年に3回以下の場合は計算に含む必要がないので、月給のみで計算します。
育児休業給付金の受給は、条件次第で延長をすることができます。育休期間は「子どもの1歳の誕生日の前日まで」が原則となっており、育児休業給付金の受給ができるのも最長1年間です。しかし、「養育者が死亡」「病気・ケガにより、子どもの養育が困難」「子ども(1歳6カ月以上)が保育所に入所できない」「6週間以内に出産もしくは産後8週間以内である」といった理由がある場合に限り、受給の延長ができるケースもあります。また、離婚によって子どもが配偶者が同居していない場合にも受給の延長が認められる可能性があるので申請してみましょう。育休中に妊娠をする場合もあるかもしれません。そのようなときにも、1人目の育児休業給付金の受給期間が終了していれば、2人目の分を申請できます。
育児休業給付金を申請してみよう
一般的に、育児休業給付金は勤務している会社で申請を行いますが、希望すればハローワークで申請することも可能です。手続きの開始は、出産予定日がわかったときから始めることができます。人事・総務部で、産休・育休期間をどのくらいの期間取得をすることができるのか相談しましょう。育児休業給付金の受給資格が確認できたときに、同時に「育児休業給付受給資格確認票」「育児休業給付金支給申請書」を受け取ります。このときに受け取る育児休業給付金の申請書は初回分です。
母子手帳、給付金の受取用口座の通帳の写しをあらかじめ用意しておくと、スムーズに申請ができます。育休が始まる前に申請書に必要事項を記入し、母子手帳と通帳の写しを添えて会社へ提出しましょう。その後は、2カ月ごとに育児休業給付金の申請を行わなければなりません。申請日には期限があるため、期限内に申請ができるようにスケジュール帳に記入しておくなど、忘れない工夫をしておくのがおすすめです。
夫婦で育休を取得することができれば、育児休業給付金がよりお得に受給できるようになります。通常、育休を取得できる期間は最長1年ですが、「パパ・ママ育休プラス」を活用すれば最長1年2カ月まで延長されるのです。「パパ・ママ育休プラス」とは、夫と妻どちらも育休を取得することでその期間を延長する制度を指します。ここで注意すべき点は、夫のほうが先に育休を開始しなければならないことです。妻が夫より先に育休を開始した場合は「パパ・ママ育休プラス」の対象外となるため、1年間しか休業することができません。
しかも、妻と夫が育休を6カ月ずつ取得すれば、最大1年間の育児休業給付金給付率67%を継続できます。通常は6カ月目までは67%ですが、その後は50%に下がるため、夫婦で育休を取得したほうがお得なのです。夫は「パパ休暇」を利用すれば、2回の育休を取得することもできます。こちらは妻が産後8週間以内の産休中に育休を取得し、妻が育休取得後に再び夫も育休を取得することができる制度です。妻1人で育休を取得するより夫婦2人で取得すれば、金銭面だけではなく、子育ての負担も軽減できるメリットがあります。
育児休業給付金の振込は申請から最短2カ月後
「育児休業給付金の申請をしたのに、一向に振込がない」と不安になる人も少なくありません。給付金は育休を開始した当月から振込がされるものと考えられがちだからです。しかし、結論からいえば、最初の振込は申請から最短で2カ月、遅い場合には5カ月後という場合もあります。これは、給付金を受け取るために「働いていない」ことを証明しなければならないという制度の仕組みが深く関わっています。
そのため、育児休業給付金の申請が可能になるのは育休開始日から2カ月後です。たとえば、育休開始日が3月28日であれば、申請ができるのは5月28日になります。この2カ月の間に給与を受け取っていないことや働いていないことを証明できるというわけです。ちなみに、育児休業給付金の申請締切日は「育児休業開始日から4カ月経過した月の末日」です。今回の例でいえば、7月末日までに申請を完了していなければなりません。申請が受理され、育児休業給付金の支給が決定すれば、1週間前後で指定口座に振込されます。2回目以降の受給も2カ月ごとに申請しなければなりませんが、こちらも予定通りに進まない場合があります。そのようなときに備えて、貯蓄もしっかりしておくほうが安心です。
本来ならば2カ月ごとに受給できる育児休業給付金ですが、場合によっては5カ月以上かかってしまうケースもあります。それが書類を提出し、会社に手続きを任せた後のミスです。実際に申請後、受給をするまでにはさまざまな人の手に書類が回ります。そのため、途中の段階で書類の手続きが忘れられていたり、書類の紛失があったりなど申請が完了していない場合もあるのです。1回目の受給日が本来2回目の受給をする時期だったという例もありました。振込が予定日より遅れ過ぎているときは、会社やハローワークに確認をとるようにしたほうが良いです。それによって原因が発覚し、改めて申請の手続きが進められることもあるからです。
雇用保険に加入していなかった場合の対策
育児休業給付金の受給は、雇用保険に加入をしていることが必須条件です。そのため、加入をしていない場合は申請をすることもできません。では、「そういった場合にできる対策はないのか」ということですが、本来、雇用主には従業員を雇用保険に加入させる義務があります。そのため、雇用保険に加入しなければならない条件がそろっていたにも関わらず、加入できていなかった場合にはあらためて加入をすることで育児休業給付金の受給ができる可能性があります。
雇用保険は過去2年間に遡って加入できるため、その期間分の保険料を支払います。雇用保険は従業員本人だけではなく、雇用主側も保険料の負担をするため、きちんと支払ってくれるように話し合いをする必要があります。雇用保険に加入し、保険料の支払いをすべて終えたうえで、あらためて育児休業給付金の申請を行います。先述したように、受給のためには「育休開始日前の2年間で11日以上勤務している月が12カ月以上あること」を含め、いくつかの条件をクリアしなければなりません。申請に必要な条件についても確認をしておくほうが良いでしょう。ただ、育休については入社後1年以内の場合、取得できない会社もあります。転職する際に育休についてもチェックをしておくほうが、いざ必要となったときにスムーズに手続きを進めることができます。
やってはいけないこととして、「実際にはすでに職場復帰をしているのに申告をせず、育児休業給付金を申請すること」があります。こういった行為は明らかにルール違反であり、これによって育児休業給付金の受給をした場合はその金額分すべてを返金しなければなりません。返金の際には、雇用主に手続きを行ってもらう必要があります。労働者名簿や育児休業期間中の賃金台帳・出勤簿などの書類を添付し、「誤った申請をなぜ行ったのか」という理由を記載した訂正願を提出します。
提出後には、不正受給の有無が確認されるので隠すこともできません。返金は送られてくる納付書で行います。返金が確認された後、あらためて職場復帰するまでの期間についての育児休業給付金の申請をしましょう。職場復帰後の分も育児休業給付金を受給できればお得だと考えた結果、かえって手間がかかることになり、それがもしバレれば周囲からの信頼も失ってしまいます。こういった不正行為はしないのが前提だと考えておくほうが良いです。育児休業給付金は適切に手続きを行えば、育児をしながら働くワーキングママにとって非常に有効なものとなるため、転職をする際にも念頭に置いておくほうが無難です。活用できるものはできるだけ生活に取り入れて、仕事も子育ても楽しみましょう。
育児休業給付金を生活に上手に取り入れよう
育休の際には賃金が発生しないため、生活面に不安を感じる人が少なくありません。そのようなときのために「育児休業給付金」制度があるので、条件を満たしているのであれば申請をするのがおすすめです。給付金は育休開始日から6カ月間は賃金の67%、それ以降は50%が支給されます。夫婦で育休を取得することでお得になる制度もあるので、上手に取り入れましょう。
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